お役立ちコラム

生命保険の思わぬ落とし穴とは!!

 公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、日本人の約8割は生命保険に 加入しているそうです。もちろん、その目的は様々ですが、生命保険の加入につき、 今日は2つの論点を解説していきます。

(1)相続税における非課税枠

 相続が発生して、生命保険金が相続人に支払われた場合、

   「500万円×相続人の数※」までの額は非課税となります。

 ※ 厳密にいうと、「相続人の数」ではなく、「法定相続人の数」ですが、 難しくなるので、ここでは「相続人の数」と表現します。

 ですので、相続税がかかる方で死亡保険金が非課税枠の上限まで達していない場合は、 追加の加入を検討すべきと言えます。  中には、非課税枠の上限まで達していないにも関わらず、 預貯金も十分に持っているというケースもあります。                    当然ですが、預貯金には非課税枠はありませんので、 その残高そのものが相続税の対象になります。

 余命宣告を受けてからでも加入できる生命保険はありますので、 この非課税枠を有効に使うことを検討してみてください

(2)相続人同士仲が良くない、またはもめそうな場合

 相続人(被相続人の子供)同士の仲が良くない、または、微妙というケースは非常に多いです。 親(被相続人)は心配して、「自分が死亡した場合の保険金は子供達全員に渡るようにしよう」と 死亡保険金の受取人を分散していたとします。

しかし、この考え方は危険です。 例えば、下記状況の相続があったとします。

 ○ 相続人は子供A(長男)、子供B(次男)  →  2人の仲は悪い

 ○ 被相続人の財産は自宅のみ

   → 被相続人は自宅の不動産を長男に相続してもらい、守ってもらいたいと考えていた

   → 被相続人はABの仲が悪いことを心配し、「自宅をAに」という 遺言を書いていた

 ○ 被相続人が死亡した際の死亡保険金の受取人は下記であった

  ・ 死亡保険金1,000万円:受取人A

  ・ 死亡保険金5,000万円:受取人B

    → 被相続人は自宅をAに相続させる調整として、B分を多くしていた

 しかし、これでは、自宅の不動産につき、Bにも一定の権利があり、遺留分の減殺請求※という請求をすることができます。

※一定分は相続できるという相続人に与えられた権利のこと

例えば、「愛人に全ての財産を相続させる」という遺言があっても、 相続人は一定の財産を相続できる 

 なぜBにも一定の権利が発生してしまうかというと、生命保険金は相続財産ではないので、 被相続人の財産は自宅のみとなり、これにはBの権利も当然に発生するからです。

 ちなみに、最高裁(昭和48年6月29日)でも「生命保険金は受取人固有の財産であり, 被相続人の遺産ではない」と判示されています。

 結果、バランスを考えて死亡保険金の調整をしたにも関わらず、

 ○ 死亡保険金1,000万円:そもそもAの財産

 ○ 死亡保険金5,000万円:そもそもBの財産

 となり、さらにBは自宅の不動産につき一定の権利を主張できるのです。 このようにバランスを取った意味が無くなってしまうのです。

 Aは自宅を守るために、受け取った1,000の死亡保険金の全額を 払わなければならないかもしれません。

 結果として、被相続人が想定した状況にはならないかもしれないのです。 ですので、このような場合は死亡保険金の受取人を全てAにしておくべきと考えられます。

 そうすれば、BからAに遺留分の減殺請求があったとしても、 AはBに死亡保険金の中から一定額を支払えば、それで済むのです。

 もちろん、自宅の不動産の評価額によっては死亡保険金だけではカバーできないケースもありますので、 その評価額により、死亡保険金の額を決める必要があります。

 このように同じような状況であっても、結果は大きく変わります。ですので、

 ○ 死亡保険金は遺産ではない

 ○ 遺産ではないので、遺産分割の対象にもならない

 ○ 死亡保険金はそもそも受取人固有の財産である

 ○ 保険金以外の部分が遺留分の対象になる

ということを覚えておいてください!! 

 

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