経営力向上計画 その5
前回に続き経営力向上計画について、ご説明をさせていただきます。
今回は事業承継に係る登録免許税・不動産取得税の特例をご紹介致します。
事業承継による土地・建物の登録免許税や不動産取得税について優遇される制度となります。
事業承継では土地・建物の所有者が移動することで不動産の登記手続きにかかる費用や登録免許税・不動産取得税が発生するケースが多くございます。
土地・建物を買い取る金額だけでも高額になるため、こちらの制度を利用することにより少しでも資金を確保するように取り組んでいただければと存じます。
≪概要≫(前回同様)
「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。
簡単にまとめますと下記の4つについて、優遇を受けることができます。
・税金の計算で優遇してもらえる。
・融資審査で優遇される。
・補助金申請の際に採択される可能性がアップする。
・事業承継をスムーズに行うための特例がある。
≪税制優遇措置≫
主に事業承継の際に土地・建物に係る登録免許税及び不動産取得税に対して優遇される制度となります。
土地・建物につきましては売買価格が大きくなるケースが多いです。
そのため、それに付随する税金も高額になることからこちらの制度を利用することにより少しでも資金の確保に努めていただければと思います。
【中小企業経営強化税制:事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例】
1.制度の概要
他者(社)から事業を承継するために、土地・建物を取得する場合に、登録免許税は税率が低くなります。不動産取得税は課税標準額(税金を計算するための基礎となる金額)を一部控除してもらえます。
2.適用を受けるための要件など
中小企業者等が、適用期間内に中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、合併・会社分割又は事業譲渡を通じて他の中小企業者等から不動産と一緒に事業用資産等を取得する場合には不動産の権利移転について生じる登録免許税と不動産取得税の軽減を受けることができます。
① 中小企業者等とは
下記のいずれかに該当する法人を言います。
・資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
・資本金又は出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,00人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・協同組合等(中小企業等経営強化法第2条第2項に規定する「中小企業者等」に該当するものに限る)
※下記、資本金が1億円以下でも中小企業者に該当しないので注意が必要です。
・同一の大規模法人(資本金又は出資金の額が1億円超の法人、資本金又は出資金を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
※これらの条件を満たさない場合でも、中小企業経営強化法上の「中小企業者等」に該当する者であれば、登録免許税の軽減措置のみ利用することが可能です。
② 適用期間
平成30年7月9日から令和4年3月31日までの期間
③ 対象となる事業承継方法
合併・会社分割・事業譲渡により、他の中小企業者等から土地・建物を含む事業上の権利義務を取得する行為であって、事業の承継を伴うもの。
※「事業の承継を伴う」取組みであることが必要です。そのため、下記の内容の場合には認定の対象外となります。
・同一の者に支配された法人間での事業の移転等、実質的に事業の承継といえないものは除かれます。 具体的には、承継される企業と承継する企業を直接又は間接に支配している者が、同一の者である場合には、「事業の承継を伴う」ものとはいえず、対象となりません。
・事業を承継させる側の経営者と事業を承継する側の経営者が親族関係にない場合であれば、認定対象となります。
二者間の経営者が親族関係にある場合には、別途申請書の提出先又は中小企業庁事業環境部財務課に事前確認の上、こちらの認定を受けることが可能か確認をお願い致します。
3.優遇される税金内容
上記2に該当する場合には下記の内容について税制優遇を受けることができます。
①登録免許税
下記、「→」が軽減された後の税率(計画認定時の税率)になります。
事業譲渡による移転登記 2.0% → 1.6%
合併による移転登記 0.4% → 0.2%
分割による移転登記 2.0% → 0.4%
※平成31年3月31日までの間、土地を売買した場合の登録免許税は、一般的には1.5%に軽減されています。
②不動産取得税(事業譲渡の場合のみ適用されます。(※1))
不動産取得税は下記の算式により税金が計算されます。
不動産の価格 × 税率 = 税金
こちらの制度のより「不動産の価格」が1/6相当を控除された状態で税金の計算をすることができるようになります。
※1合併や一定の会社分割の場合は非課税になります。
4.適用を受けるための手続き
① 計画認定
下記の流れにより計画認定を受ける必要がございます。
合併、会社分割又は事業譲渡を行って土地・建物を取得することを内容に含む経営力向上計画を策定し、認定を受ける。
登録免許税の軽減措置を受ける場合には、適用証明申請書を計画認定の省庁に2部提出し、軽減措置の対象であることを示す適用証明書を受け取る。
不動産取得税の軽減措置を受ける場合には、申請書の提出先は、土地・建物が所在する都道府県になるため、ご注意ください。
※不動産取得税の軽減措置を受ける場合には、事前に提出先となる省庁に対し、申請書の記載内容や提出手続きについて、連絡をするようにお願い致します。
② 合併等の実行、土地・建物の権利移転登記手続き
認定計画の内容に従って合併、会社分割又は事業譲渡を実行した後、土地・建物の権利移転に係る移転登記手続を法務局に申請することになります。
登録免許税の軽減措置を受ける場合には、この申請の際、適用証明書を添付して申請してください。申請時に納付すべき登録免許税が軽減されます。
※登録免許税の軽減措置を受けるためには、計画認定の日から1年以内に移転登記手続きを完了する必要がございますので、ご注意ください。
③ 不動産取得税の申告・納税
不動産取得税の軽減措置を受ける場合には、不動産の取得に係る申告の際に、認定書の写しを添付して申告する必要がございます。その後、都道府県から送付される納税通知書に従い、軽減された税額を納税する流れになります。
今回は以上となります。
事業承継に伴う税制優遇についての節税効果は事業承継する土地・建物の金額次第によるところが大きいですが、事前に経営力向上計画による認定を受けるだけで当該制度を活用することができます。
取組まれる事業承継の内容によって優遇される税額を検証いただければと思います。
もし、専門家へ依頼することによる費用対効果が薄い場合でもご自身で計画書の申請に取組まれるもの一つの手段と考えております。
こちらのコラムをご参考いただきまして、ご活用いただければ幸いです。
ありがとうございました。
【参考】
経営力向上計画策定の手引き
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf