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金融機関の担当者異動について!

 金融機関の人事異動は他業種と比較しても多いのではないでしょうか。通常、1支店の在籍期間は営業職で3年~5年程度、事務職でも5年~6年程度だと思います。支店内でのジョブローテーションもありますし、地区や担当先の変更もあります。そして退職者に伴う異動も考えますと、「この間変ったと思ったらもう変わるの」ということになります。

 普通に考えれば同じ支店で長く働く方が地域やお客様の事に詳しくなれますし、親密な関係も築くことで、業績も上がるのではと考えるのは自然です。また「地元密着」を理念に掲げる金融機関が多い中、人がコロコロ変わるのは矛盾していると思うのは当然と思います。しかし、そこには「担当者の不正を防ぐこと」と「お客様との癒着を防ぐこと」という2つの理由が存在するわけです。


①担当者の不正を未然に防ぐ
 なぜ人事異動が多いかというと、まず不正を起こさせない環境を作ることが挙げられます。「命の次に大事なお金」をお預かりする金融機関ですが、特定の者に特定の仕事を長く任すことで、不祥事に繋がった事例が過去多くみられますし、発覚が遅れることで被害額も大きくなり、お客様に多大な被害を及ぼすことにもなります。


②お客様との癒着を防ぐ
 一線を引いた関係を維持しなければならない以上、お客様と本当に仲良くなる前に異動させるという考え方があります。仲良くなり過ぎたばかりに情が移り、融資が無理な先に対し、嘘の情報や試算表の数字を誤魔化し、あたかも業況が良いように見せかけて融資を行う「情実融資」や「浮貸し」等に手を染めさせない為です。このような行為は背任行為とみなされ刑罰の対象になります。公共性の高い金融機関の不祥事は、社会に与える影響も大きく、透明性の高い経営が求められることから、異動が頻繁に行われるわけです。


③異動の流れ
 ここでは、信用金庫を例に出します。2~3日前に内示がでる金融機関もあるようですが、私がお聞きした担当者の金融機関では、課長以上は辞令交付に本部に行く手前、辞令交付の前日、それ以下の職員であれば、当日に初めて知らされる様です。いつ辞令が出るかもはっきりは決まっていないので、営業活動から戻ると支店長に呼ばれて初めて知るということが普通なのだそうです。


④引継ぎ期間はたったの4~5日
 続いて引継ぎ期間ですが、基本4日間でした。法人担当であっても80社程度は担当を持っていますし、地域で担当している人は法人個人合わせれば500世帯以上の担当先があります。その中で4日間をどう使うかというととにかくお客様に異動の事実を知ってもらうことに尽きます。

 朝から夕方までひたすら訪問し、不在であれば、電話や担当者と新任者の名刺を入れるだけの場合もあります。移動時間も加味すれば、地域担当であっても100件回れれば、よく回ったと自分を褒めたくなります。遠場担当であれば、移動に時間がかかり20件も回れればいい方ですし、雨であれば、あまり回れなくなることもあります。そして帰店してからは、引継表の作成です。現在進行中である案件の引継ぎやキャンペーンなどの協力先、以前にトラブルがあった先、気難しく注意を要する先、反社先、一か月の予定訪問先リスト、訪問可能時間、先々の預金融資情報等、頭にあることを全て書面にしていきます。

 常日頃から引継ぎ事項のデータを更新しておけば、それほど手間ではないですが、行っていないと大変な作業になります。その書面と挨拶に回った記憶だけが、引継がれていく事になります。お客様の立場からすれば、自分のことはきちんと前任者から聞いているものと思われると思いますが、実際はこんなものです。


⑤面倒くさいと思わず自社のアピールを改めてしてみてください
 引き継ぎのスケジュールが非常にタイトなのは、多くの時間をかけては仕事が回らなくなるということと同時に担当者が不正を働いていた場合、証拠隠滅する時間を与えない為ということもあります。
 スケジュール的に引継ぎしきれないで異動してしまうケースも多々あり、異動の時期は担当が変わってから全く来なくなった等のクレームになることも多くあります。
 逆に、他行の担当者は異動時には肩代わりを狙えるチャンスでもあるので、異動に関する情報収集には余念がありません。


 以上のことを踏まえて、金融機関の担当者が変わると、「また、一からやり直しか・・・やっとうちのことを理解してくれるようになったのに・・・」と思われる方が多いと思います。しかし、金融機関の引継ぎ事情に理解を示し、新担当者に対して一から丁寧に自社の説明をしてあげることが、新担当者との関係性を良くするための秘訣ではないかと思います。
 金融機関の担当者も、「こんなこと、今更聞いたら、社長、怒るだろうな・・・」と思っているものです。担当者のそのような遠慮のせいで、自社の強みが金融機関に正しく伝わらないのはもったいないことです。

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