お役立ちコラム

経営力向上計画 その8

前回に続き経営力向上計画について、ご説明をさせていただきます。

今回は法的支援についてご紹介させていただきます。

事業承継などで許認可が必要な業種や協同組合等の発起人の条件、事業譲渡に関する債務免責などで手続きを進めやすくすることが可能です。

一般的な事業内容とはあまり馴染みのないお話しもでてきますが、事業承継などをご検討されている経営者様にとっては有益な情報かと考えております。

どうぞ、ご参考くださいませ。


≪概要≫(前回同様)

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。

簡単にまとめますと下記の4つについて、優遇を受けることができます。

 ・税金の計算で優遇してもらえる。

 ・融資審査で優遇される。

 ・補助金申請の際に採択される可能性がアップする。

 ・事業承継をスムーズに行うための特例がある。


≪法的支援の概要≫

経営力向上計画に事業承継や事業譲渡などを含めて申請をし、その認定を受けた場合には許認可が必要な事業や債権者に対する事業譲渡に関する通告などで通常より簡易的に進めることができるようになります。

事業計画で該当する内容がございましたら、是非取り組んでいただければと思います。


【各種法的支援】

1.許認可承継の特例

 ①概要

  対象となる取り組みは「合併」「分社分割」「事業譲渡」です。

  事業承継等を行うことを記載内容に含む経営力向上計画の認定を受けた上で、その内容に従い、以下のいずれかの許認可事業を承継する場合には、承継される側の事業者から、当該許認可に係る地位をそのまま引き継ぐことができます。


  旅館業/建設業/火薬類製造業・火薬類販売業/一般旅客自動車運送事業/一般貨物自動車運送事業/一般ガス導管事業


②手続き関係

 1.事前相談

  本支援措置によって許認可を引き継ぐ場合にも、許認可を所管する省庁の判断が介在するため、許認可を所管する行政庁に事前に相談が必要です。許認可を所管する省庁から、質問や資料提出の求めがあった場合には、回答や書類の提出が必要となります。


 2.計画認定申請

  事業を引き継ぐためのスキームや、許認可承継の特例を利用したい旨(申請様式の「9 特定許認可等に基づく被承継等特定事業者等の地位」の欄)を記載して、経営力向上計画を策定し、申請窓口に対して申請を行います。


 3.計画認定

  計画の認定を受け、認定書の交付を受けることになります。


 4.事業承継等の実行

  認定計画に記載された内容に従い、事業承継等を実行していきます。


 5.報告

  事業承継等を実行した後は、遅滞なく、計画認定を行った省庁に対して、報告を行う必要があります。



2.組合発起人数の特例

 ①概要

  対象となる取り組み内容は「事業協同組合等の設立」です。

  組合の組成を記載内容に含む経営力向上計画の認定を受けた上で、その内容に従い、事業協同組合、企業組合又は協業組合を設立する場合には、通常、最低4人必要とされている発起人の人数が、3人でも可となります。


 ②適用対象者

  経営力向上計画において、「事業承継等」として、1事業協同組合、2企業組合または3協業組合の設立を記載し他の事業者と経営資源を共同で利用することにより生産性を向上させる取り組みを行う事業者が対象となります。


 ③手続き関係

  1.計画認定

   次に記載する組合設立の認可申請に先立って、組合の設立を内容に含む経営力向上計画を策定し、認定を受ける必要があります。認定を受けた後2か月以内に、下記2.組合設立の認可申請を行う必要があります。


  2.組合設立の認可申請、設立登記手続

   事業協同組合、企業組合又は協業組合の設立に当たっては、組合の設立登記に先立って、所管行政庁から設立の認可を受けなければなりません。

   この際、通常の添付書類に加えて、経営力向上計画に係る「認定書の写し」及び「経営力向上計画の写し」を添付することによって、発起人の人数が3人であっても、設立認可を受けることが可能になります。認可を受けた後に設立登記手続きを行いますのでご注意ください。



3.事業譲渡の際の免責的債務引受けの特例

 ①概要

  通常、企業が事業譲渡により債務を移転するには、債権者から個別に同意を得る必要があり、この同意がない場合には、事業譲渡をした企業は債務を免れないこととなります。

  事業譲渡を行って他者から取得する経営資源を活用する取組みについて計画認定を受けた場合、企業が債権者に対して通知(催告)し、1ヵ月以内に返事がなければ債権者の同意があったものとみなすことができ、より簡略な手続きにより債務を移転することができます。

  この支援の措置の適用対象となるのは、①「事業承継等」として、事業譲渡を行う場合であって、②承継される側の特定事業者が株式会社であるときに限られますので、ご注意ください。


 ②手続き関係

  1.計画認定

   事業譲渡の実行に先立って、事業譲渡により他の特定事業者等(株式会社)から経営資源を取得することを内容に含む経営力向上計画を策定し、認定を受ける必要があります。


  2.事業譲渡に係る組織決定(承継される側の企業)

   承継される側の中小企業(株式会社)において、会社法の規定及び会社の内部規程に従い、取締役会の決議、株主総会の決議、又は執行役の決定を経てもらいます。


  3.債権者に対する催告(承継される側の企業)

   承継される側の企業から、当該企業に対して債権を有する債権者(※)に対して、催告を行います。催告においては、1か月以上の催告期間を定めて、事業譲渡の実行に反対する場合には、当該期間内に、異議を申し出ることができる旨を通知します。


  4.異議の申出

   催告期間内に異議を述べた債権者に対しては、承継される側の企業は、①債務を弁済するか、②担保を提供するか、③弁済をするために信託会社又は金融機関に財産を信託する必要があります(但し、弁済期や債権額、財務状態などを考慮して、異議を述べた債権者を害するおそれがないと認められる場合には、①~③のいずれも行う必要はありません。)。


  5.催告期間の経過

   催告期間内に異議を述べなかった場合、債権者は債権の移転に同意したものとみなされます。以後その債権者は、事業を引き継いだ事業者に対してしか、支払いその他の債務の履行を求めることができません。


  6.事業譲渡の実行

   催告期間の経過後に事業譲渡を実行することにより、債務の移転に関する権利関係を明確化しておくことができます。


  7.報告

   事業譲渡を実行した後は、遅滞なく、計画認定を行った省庁に対して、報告を行う必要があります。



今回は以上となります。

許認可が必要な業種や協同組合、事業譲渡の際の免責関係など特殊なタイミングで活用することができる内容ではございますが、事業承継等をお考えの経営者様には該当するものがございましたら取り組むことを検討いただければと考えております。

今回で経営力向上計画のご説明は以上となります。


こちらのコラムをご参考いただきまして、少しでも皆さまにとって有益な情報提供になれば幸いです。

ご覧いただきまして、誠にありがとうございました。


【参考】

 経営力向上計画策定の手引き

  https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf

 税制措置・金融支援活用の手引き

  https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_zeiseikinyu.pdf

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