お役立ちコラム

ブックレビューNO.11

 今回の本は、三戸岡道夫さんの「不運を幸運に変える 親子で学びたい二宮金次郎伝」です。この本は、実際に二宮金次郎がどのような幼少期を過ごし、青年期を過ごし、そこで何を行ってきたのかが具体的に書かれている自伝となります。 生涯を通じてたくさんの教訓を残していますが、そんななかでも中心的なものとして、

①勤労・・・よく働く  

②分度・・・身分相応に暮らす  

③推譲・・・世の中のために尽くす

 という教えです。この3原則をもってすれば、いかなる困難も幸運に変えていくことが出来るのであり、事実その手法で何百という幸運を開拓していきました。また特徴として、金次郎の教えは机上の学問ではなくて、すべてが困難な農村復興の中から生まれてきた実践哲学であるという特徴があります。よってこの教訓は現在の私たちの生き方や経済活動にも当てはまるものといえるのではないでしょうか。

1.二宮金次郎とは  

 時代は80年後に明治維新というまさに徳川幕府の後半から幕末にかけての時代の話となります。金次郎は生まれこそ裕福な農家で生まれたが、近所の川の氾濫により田畑を失い、また父が病弱だったこともあり、あっという間に極貧の生活へと転落しました。病弱の父に代わって懸命に働きながら、仕事の暇を見つけては本を読んで勉強に励んでいました。

 そんな中、父を14歳で亡くし、母も16歳の時に亡くしました。今の時代ではなかなか想像も出来ないような状況の中、生家を復興するために懸命に働きました。ただ働くだけでなく、常に頭を使い、全体をみて、また長期的に考えて、効果的に働くことを身につけていきました。

 生涯を通して行った600ほどの農村の復興の事業を見てみると、その復興とは農地を広げて農作物をたくさん取れるようにすればよいというものではなく、それを通じて農民の物心が豊かになり、村全体の経済が良くなり、その効果で隣の村まで良くなり、それらを支配する藩自体の経済も良くしていくという、総合的な面をもっているものでした。

 金次郎は学者ではないから、弟子たちに講義をするようなことはなく、多くの農民たちと一緒に働く中で、いろんな話をし、教え、一緒に考え、自ら行動で示すことが教訓となるという、まさに実践から導き出した哲学なのです。

2.一番反省を感じた点  

 金次郎はその生涯の中で非常に迷い苦しんだ時に、成田山新勝寺で厳しい修行をして、その中で「一円観」という信念を開眼しました。その悟りとは、人には絶対の善人もないかわりに、絶対の悪人もいない、至誠をもってあたれば復興事業を妨げる人々の心も動かすことが出来るというものでした。要するに善悪など、世の中のあらゆる対立するものを1つの円の中に入れて観るというものです。

 世の中には、善悪、強弱、遠近、貧富、男女、夫婦とお互いに対立し、対象となっているものが無数にあります。この対立するものを1つの円の中に入れて、相対的に把握しようとしています。

 具体例を挙げると、  

 ①同じ店でも買い物に行くときは遠くて不便だと思っていても、その店が火事だと聞くと家から遠い場所で良かったと思ったり  

 ②刃物の例では、木を削るときには切れなくて困っても、指をけがした時には、切れない刃物で良かったと思ったり

 ③船に乗る例では、乗ろうとして断られたら恨むが、その船が事故で沈むと乗らなくてよかったと思ったり

 このように、禍福、幸災などお互いに対立するものはそれぞれが円の半分であり、それらを合わせて1つの円となるというもので、物事の相対性を1円観として説いています。この部分は非常に大切な考え方だなと思いました。自分を妨害する人は悪い人で、そういう人には制裁を加えるべきと考えてしまう事があったとしても、この考えに基づくと、そうではなく、その反対者には反対者の理由があり、反対者が出ることは、自分の誠意がまだ足りず、反対させる原因が自分にもあるという点、日々の仕事の中でも痛いくらいに反省を感じた部分でした。またすべてつながっており、一喜一憂せずに、自分の考え方次第ですべて変わるという部分では、大好きなことわざである 「人感万事塞翁が馬」にも通じるものだと思いました。

3.最後に  

 5年ほど前に偶然にも金次郎の6代目の子孫という方のお話を聞く機会がありました。その話ではこの自伝のように成功の部分やきれいな部分だけではなく、実際にその方がおばあさまから聞いた金次郎の苦労話や、問題があったかもしれない部分の話等も聞くことが出来ました。そんな話を聞いていたことから特別な人なのではなく、金次郎も普通の人間であり、また日々の苦労の中から自分なりの答えを経験から見つけていったのだということがわかり、余計に話が入ってくる感覚になりました。

 金次郎の教えの基本である、勤労、分度、推譲、は私が生活していくうえで決して忘れてはいけない非常に大切な教えです。いろいろな本を読む中で、「これだ、これは大事だ」と思うことは多いのですが、日々の忙しさの中でいつの間にか忘れてしなっている自分がいることも改めて反省して、自分を見つめる時間を作って、確認しながら進んでいきたいと思いました。

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