法人成り その1(役員報酬、給与について)
事業を開始される方の多くは個人事業から始められることが多いです。
そのため、事業が成長し利益がある程度確保できるようになりますと、法人成りをして節税対策を検討する必要性がでてきます。
法人成りについてはボリュームが多いため、数回に分けて掲載していく予定です。
今回はその法人成りの"メリット"で話しに上がりやすい給与をテーマにご説明致します。
【経営者とその家族の給与】
法人の場合には経営者への給与(=「役員への役員報酬」以下同じ)は会社の経費にすることができます。また、経営者家族への給与も経費にすることができます。
更に、給与は給与所得控除という規定により、経営者への税金を低く抑えることができます。
注意点は役員への役員報酬は「定期同額給与」でないと経費にならない事です。
定期同額給与については別の機会にご説明致します。
これに対して、個人事業の場合、経営者への給与は経費になりません。
また、家族への給与も生計が一緒でしたら原則経費になりません。
家族への給与を経費にするためには、一定の要件を満たす必要があります。
要件を満たして家族への給与が経費にできても、その家族は経営者の配偶者控除・扶養者控除の対象から外れてしまい、その分税金が高くつきます。
つまり、個人事業だと経営者への給与は経費にならず、その家族への給与も支給するか判断に注意が必要です。
下記、具体的な金額でご説明いたします。
前提:会社利益:1000万円/年 、経営者給与:500万円/年
・会社利益は経営者給与がなかった場合の金額とします。
・税率は国税のみで試算します。
≪法人の場合≫
①会社利益に対する税金
1000万円 - 500万円 = 500万円(給与500万円が経費となります。)
500万円 × 税率15% = 75万円
②給与に対する税金
500万円 - 144万円※1 - 48万円※2 = 308万円
308万円 × 税率10% = 22万円(税率を概算として10%とします。)
③納める税金
①法人 75万円
②経営者 22万円
合計 97万円
法人の場合、97万円の納税となります。
※1 144万円 ... 給与所得控除
※2 48万円 ... 基礎控除
≪個人事業の場合≫
①会社利益に対する税金
(1000万円 - 48万円※2) × 税率 = 160万円
(税率を概算として16.8%とします。)
②給与に対する税金
経費計上できないため0円
③納税額
160万円
個人事業の場合、160万円の納税となります。
※2 48万円 ... 基礎控除
≪結論≫
上記の例ですと、法人と個人事業とでは法人にしておく方が63万円の節税となります。
個人事業での利益が高額になるにつれて法人成りにする方が有利になります。
法人をご検討されている経営者様は一度、ご自身の給与をいくらに設定するかでシミュレーションしていただけばと思います。
今後も、法人成りのテーマは継続して掲載しようと思いますので、ご参考いただければ幸いです。