キャリアアップ助成金
今回は、キャリアアップ助成金の全体的なご説明をさせていただきます。
こちらの助成金は各コースに分かれていて、それぞれに要件や助成金の支給額が違います。細かいご説明は別の機会にさせていただきます。
あくまで今回はキャリアアップ助成金の内容と申請から受給までの流れ、また申請にあたって必要な内容を網羅的に記載致します。
どうぞ、ご参考くださいませ。
【概要】
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者のキャリアアップを促進し、正社員やその処遇を改善することに取組んだ事業主に対して助成金を支給するための制度です。
厚生労働省より「労働者の意欲、能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するため」に設けられた制度となります。
経営者にとっても従業員にとっても、大変ありがたい制度です。
経営者にとっては事業計画に沿って、従業員の成長を促し、その成長とともに雇用契約内容を変更し、従業員の生産性にあった給与を支給するための手助けとなります。
マンパワーを必要とする会社にとっては非常にありがたい制度だと考えています。
【助成金受給までの流れ】
キャリアアップ助成金を受給するためには下記の流れとなります。
(正社員化コースの場合)
1. キャリアアップ計画の作成と提出をする。
→作成にあたって労働局・ハローワークへ作成の援助と認定をしてもらいます。
2. 就業規則等の改定をする。(正社員等への転換規定がない場合)
3. 就業規則に基づいて正社員等へ転換する。
4. 正社員等へ転換後に6か月の賃金の支払いをしている。
(転換前と比較して5%以上賃金が増額している必要がございます。)
5. キャリアアップ助成金の受給を申請する。
→労働局・ハローワークにて審査と決定により支給されます。
【キャリアアップ助成金の共通事項】
キャリアアップ助成金は下記の7つのコースに分かれています。
・正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・健康診断制度コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度共通化コース
・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長コース
どのコースでも必ず「キャリアアップ計画」を取組実施する前日までに作成し、労働局・ハローワークへ提出しておく必要がございます。
また、各コースにより助成金支給のための要件や支給額は違いますが、その中でも支給対象事業者に該当する要件で下記の通り共通するものがございます。
・雇用保険適用事業所の事業主であること。
・雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること。
・雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であって、以下に該当しないこと。
キャリアアップ計画書の内容に講じる措置として記載していないにもかかわらず、取組実施日の前日までにキャリアアップ計画書(変更届)を提出していない事業主であること。
・該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること。
・キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること。
【生産性要件について】
キャリアアップ助成金を申請するにあたって、生産性が向上する取り組みをする場合には、通常の助成金額または助成率が増額されます。
キャリアアップ助成金では雇用の改善だけでなく、企業による生産性向上の取り組みについても支援していこうという目的があるため、このような手当てがございます。
下記に生産性が向上しているかの要件を記載致します。
①助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、
・その3年度前に比べて6%以上伸びていること。
または
・その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること。
(金融機関から一定の「事業性評価」を得る必要がございます。)
➁生産性は下記の算式で計算されます。
付加価値 ÷ 雇用保険被保険者数(日雇労働者や短期雇用特例被保険者を除く) = 生産性
※1. 生産性要件の算定対象となった期間中は、事業主都合による離職者を発生させてはいけません。
※2. 生産性要件を算定するための算定シートを下記URLよりダウンロードができます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html
※3. 算定シートに記載する根拠資料の提出が必要となります。
【有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン】
キャリアアップ助成金を申請するには厚生労働省から掲載されている「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」に沿って、キャリアアップ計画を作成する必要がございます。
下記、主な内容です。
1キャリアアップに向けた管理体制の整備
有期雇用労働者等のキャリアアップを取組む人を「キャリアアップ管理者」として位置づけすること。
2計画的なキャリアアップの取り組みの推進
キャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、「キャリアアップ計画」を作成していること。
3正規雇用労働者等への転換
有期労働契約から正規雇用や無期労働契約への転換など。
4処遇改善
転換後の処遇への改善、社会保険適用に向けた賃金の引き上げなど。
5人材育成
計画的な教育訓練の実施やジョブ・カード制度を活用した教育訓練を実施。
詳しい内容は下記のURLの「有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン」にて確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000140521.pdf
【キャリアアップ計画について】
キャリアアップ計画は有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、おおまかな取り組みイメージをあらかじめ記載するものです。
下記の内容踏まえて、キャリアアップ計画書を作成する必要がございます。
・3年以上5年以内で計画期間を定める。
・キャリアアップ管理者を定める。
・有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドラインに沿って、おおまかな取り組みの全体の流れを決める。
・計画の対象者、目標やその期間を達成するために事業主が行う取り組み内容を記載する。
・計画の対象となる有期雇用労働者等の意見が反映されるように、会社にいるすべての労働者の代表から意見を聴くこと。
今回のご説明は以上となります。
経営者として人材を確保することは事業を成長させるための一つの手段です。
ただ、成長期の会社にとっては人材へ投資できるだけの資金力が乏しいことはよくございます。
また、最初から正規雇用で従業員を雇用することはリスクが高く、まずは試用期間をおくべきと考える方がほとんどです。
このキャリアアップ助成金は不足する資金の補填だけでなく、最初は有期雇用労働者からスタートし、従業員の成長に合わせて正規雇用とするタイミングを助成金の支給制度に合わせて事業計画を立てることができます。
注意点として、ご自身でキャリアアップ助成金を申請することは可能ですが、場合によっては就業規則の作成や改定をしていく必要があるため、ご自身だけでするのではなく社労士などの専門家を頼るべきだと考えています。
就業規則や賃金規定などは知識のない人間が作成すると、後々、経営者と従業員との間でトラブルが発生した際に思わぬ損害を被ることがあります。
会社経営を長期的に考えると逆に早い段階でこういった内容を整備しておくことは非常に価値が高いと考えています。
必要になってから整備を始めますと既にトラブルが発生していることが多いです。
慎重にご判断いただきたいと思います。
最後に末尾へキャリアアップ助成金のURLを掲載いたしますので、実際に取組まれる場合には必ずご確認いただきまして進めるようしていただければと思います。
[参考URL]
キャリアアップ助成金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000616643.pdf