お役立ちコラム

経営力向上計画 その6

前回に続き経営力向上計画について、ご説明をさせていただきます。

今回はその中でも令和3年8月2日から適用が開始される中小企業事業再編投資損失準備金をご紹介致します。

M&Aで購入する株式等を経費(損金)に計上することができる制度です。

本来であれば株式等の購入は経費にすることができず、資産に計上されるものです。

経費に計上されたものが5年後に分割して均等に利益を計上することでこちらの制度を利用することが可能です。

M&Aは必要な資金が多くなりますので、経営者様の取り組み内容とマッチする場合には積極的にご活用いただければと思います。

≪概要≫(前回同様)

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。

 簡単にまとめますと下記の4つについて、優遇を受けることができます。

 ・税金の計算で優遇してもらえる。

 ・融資審査で優遇される。

 ・補助金申請の際に採択される可能性がアップする。

 ・事業承継をスムーズに行うための特例がある。

≪税制優遇措置≫

M&Aを行う際に多額の資金が必要となるケースが多くございます。

今回ご紹介する制度はM&Aにより株式等を購入した際にその購入金額(株式等の取得価額)の70%以下の金額を経費(損金)として計上することができる制度です。

経費に計上した金額は5年後に分割して利益として計上する必要がございます。

事業拡大のために積極的にM&Aを取組まれたい経営者様にとっては株式等の購入金額を経費に計上することができるため、購入時期の決算期において節税がございます。

5年後に分割して利益が計上されますが、計画的に取り組みやすい制度かと考えています。

【中小企業経営強化税制:中小企業事業再編投資損失準備金】

(1)制度の概要

中小企業者が、適用期間内に事業承継等事前調査に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた場合、当該計画に基づき株式等を取得し、かつ、これを事業年度末まで引き続き有している場合において、株式等の取得価額として計上する金額の一定割合の金額を準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額はその事業年度において損金算入できます。

積み立てた準備金は、帳簿価額の減損等の取崩要件に該当する行為を行った場合は、取り崩して益金に算入され、5年経過後は、その後の5年間 にかけて均等額で準備金を取り崩し、益金に算入されます。

 

 ① 中小企業者とは?

  下記のいずれかの法人を言います。

 ・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

 ・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

  ※ただし、次の法人は、たとえ資本金が1億円以下でも適用対象とはなりません。

   ・同一の大規模法人(資本金の額又は出資金の額が1億円超の法人、資本金又は出資を有しない法人のうち、 常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資額の額が5億円以上である法人等) との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の 1以上の出資を受ける法人

   ・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人

   ・前3事業年度の所得金額の平均額等が15億円を超える法人

 ② 適用期間とは?

  令和3年8月2日から令和6年3月31日までの期間

  ③ 事業承継等事前調査とは?

   M&Aによる譲受側が譲渡し側に対して行う調査で、法務、財務、税務 その他の観点から、引き継ぐ経営資源について損害が生ずるおそれがないか調査を行うもので、一般的にデュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる ものです。 認定にあたっては、十分な事前調査を実施する予定かどうか、「事業承 継等事前調査チェックシート」を元に確認を行います。

  ④ 対象となる行為類型

   株式譲渡であって、事業の承継を伴うもの

  ※「事業の承継を伴う」取組みであることが必要です。

   下記の場合は対象外となりますので、ご注意ください。

   ・同一の者に支配された法人間での事業の移転等、実質的に事業の承継といえないものは除かれます。

    具体的には、承継される企業と承継する企業を直接又は間接に支配している者が、同一の者である場合です。

   ・事業を承継させる側の経営者と事業を承継する側の経営者が親族関係にない場合であれば、認定対象となり得ます。

    双方の経営者が親族関係にある場合には、別途申請書の提出先又は中小企業庁事 業環境部財務課へ問い合わせる必要がございます。

 ⑤ 積立額

  取得価額の70%を限度に、任意の金額を積み立てることができます。

  この積み立てた金額を経費と計上することができるため、事業計画に基づいて節税へ取組むことが可能です。

 ⑥ 取崩要件

  下記のいずれかの事由が発生した場合には、取崩要件に該当しますのでご注意ください。

  取り崩すということは「取崩額=利益」という意味になりますので、ご留意くださいませ。

  ・経営力向上計画の認定を取り消された場合(全額)

  ・取得した株式の売却等を行うことで所有しなくなった場合(全額または 相当分)

  ・株式を取得した法人が合併により合併法人に当該株式を移転した場合 (全額)

  ・取得した株式を発行する法人が解散した場合(全額)

  ・取得した株式の帳簿価額を減額した場合(相当分)

  ・株式を取得した法人が解散した場合(全額)

  ・株式を取得した法人が青色申告書の提出の承認を取り消され、又は取り 止めた場合(全額)

  ・取得した法人が連結事業年度の翌事業年度の確定申告書等を青色申告書 により提出できる者でない場合(全額)

  ・それ以外の場合において準備金を取り崩した場合(相当分)

(2)適用手続き

 ① 計画認定

  経営力向上の内容に株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定し、認定を受ける。

  事業承継等事前調査チェックシートの添付が必要。

  ② 株式取得の実行

  認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、事業承継等を実施したこと及び事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書を受け取る。

  ③ 税制措置の適用

  税務申告に際しては、①の申請書と認定書、②の確認書を添付。(コピーでOK)

 適用を受けるまでの手続きで事前に準備することと認定を受けることが必要となってきますので、スケージュールをご確認の上、計画的に進めていただければと思います。

 また、M&Aは相手方のいることですので、交渉に影響が出ないようにご注意いただければと考えております。

今回は以上となります。

本来であれば、株式等の取得は経費計上することはできず、資産として取り扱われます。

しかし、こちらの制度により株式等の取得に関する投資額を一定割合経費に計上することができますので、事業拡大を取組まれたい経営者様に対しては有効活用ができる制度だと考えています。経費計上した金額は5年後に均等に分割して利益へ計上する必要がござますが、M&Aは資金が多額に必要になるケースが多いため、一時的にでも節税することで資金確保へ取組むことができます。また、5年後に利益を計上することがわかっているので先の事業計画も立てやすいです。

こちらのコラムをご参考いただきまして、ご活用いただければ幸いです。

ありがとうございました。

【参考】

 経営力向上計画策定の手引き

  https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf

 税制措置・金融支援活用の手引き

  https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_zeiseikinyu.pdf

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